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護身術


地球上に生存する種は繁栄を目的とし、子孫を増やすことにそのエネルギーを費やしますが、その第二に、自分自身を守る事にいろいろと工夫をしています。それぞれの方法は非常に良くできていて、小さな蝶たちがどうやってこの方法を編み出したのか、自然の不思議さを感じます。

当たり前の方法であっても、あの小さな頭の中にこれだけの知識があるのかと目を見張るばかりですが、ここでは私が気づいた主な方法をあげてみます。

逃げる


▲網から逃げるアメリカキアゲハ

"Fight or Freigh"(戦うか逃げるか)、動物は敵に追いつめられたとき、このような状態になります。ところで、蝶の場合どうしても後者になってしまうのは、やはり、カブト虫のように戦うように出来た体でないからでしょう。しかし、この逃げるテクニックも馬鹿に出来ません。以下は採集しているとよく見られるパターンです。

1)めちゃくちゃな飛び方をする

これはモンシロチョウを驚かして追いかけてみるとよく分かるでしょう。めちゃくちゃに飛ぶと狙いが定まらず、鳥などは捕食するのを諦めてしまいます。

2)高く飛び上がる

空を飛べない敵に対しては非常に有効的な手段です。

3)スピードを上げる

タテハチョウなど、脅かすとものすごい勢いで逃げるものがいます。アゲハなどもそうですが、採ろうと思って網を振ってはずしてしまった場合・・・この後は全力疾走が待っています。

蝶の飛ぶ早さについては→蝶の飛ぶ速さ

4)フェイントをかける

まっすぐ飛んで突然方向を変える。アゲハチョウなどが得意としている飛翔技術です。鳥は大抵一度ミスすると追いかけるのを諦めてしまいます。採集者は馬鹿にされたような気分になります。

5)突然隠れる

時々見られるのですが、飛んでいて突然草薮などに潜り込んでしまいます。一度アメリカモンキチョウのメスがフォークボールの如く、草薮に急降下して隠れてしまったことがありました。鳥には有効な手段かもしれませんが、人間は草薮をかき分けて採ることが出来ます。


▲網で採りそこねた後、急降下して石の下に隠れたシジミチョウ
地面に降り立った後、歩いて石の下に移動して、じっとして近寄っても逃げません

毒を持つ

毒を持つ蝶の代表的な仲間は、ジャコウアゲハ類カザリシロチョウ類ドクチョウ類マダラチョウ類、ホソチョウ類等があります。その殆どが幼虫時代に食べていた食草からその毒素を体内に蓄えたまま成虫になるものです。毒もピンからキリまであるようで、強いものではアフリカに生息するドルーリーオオアゲハが1頭で猫6匹を殺せるほどの毒をもっていると言われています。

ところでこの毒、天敵などを殺すのが目的ではなく、食べた相手を気持ち悪くさせ、吐き出させることで、それ以後その天敵が二度と同じ種を食べないことに十分なメリットがあります。

この方法でいくと、必ず1頭は天敵に1回食べられてしまうように思えますが、多くの種は体(特に胸部)が頑丈に出来ており、鳥などに噛まれてもつぶされず、吐き出された後も飛んで逃げていってしまう事が出来ます。(もちろん、時々噛み潰されてしまう個体もおりますが・・・)。これは採集をしていると時々経験することで、胸を押して死んだと思って安心して網からマダラチョウを取り出すと、ふわふわと逃げられることがあります。

やたら頑丈になる

上記と似ていますが、オオムラサキなどの大きな種類は非常に頑丈な体を持っていることがあります。蛾の仲間ではスズメガやヤママユガなどが同じ方法を取っているものと思われます。小さな捕食者については効果があるものと思われます。

死んだまねをする(または気絶する)

捕まえると、死んだまねをする蝶がいます。これは甲虫類、特にゾウムシなどによく見られる行動で、「死んだものはおいしくない」と思っている天敵、「動いていないものは興味がない」天敵、若しくは「動かないものは見えない」天敵に有効な手段と思われます。

もっとも、この行動は蝶が本当に「死んだまね」をしているのではなく、単にショックで気絶しているのだとファーブルは説明していますが、これについてはまだ研究の余地がありそうです。


▲死んだまねをするキベリタテハ

刺すまねをする

最近日本に帰化したホソオチョウは捕まえるとその鮮やかな腹部を曲げ、指を刺すような行動をします。蜂のまねをしているのかわかりませんが、気持ちが悪いので心理的作戦は成功しているようです。

ホソオチョウの場合、腹部の色彩も蜂などに似ているため、より一層効果を引き出しているようです。

驚かす

「わっ」と驚かして逃げる。非常に有効な手段と思いませんか?
驚かす方法としては「派手な色を突然見せつける」「天敵(特に鳥)に対して苦手な「目玉模様」を見せつける」があります。

多くの蝶が羽の表は派手な色、裏は隠蔽色(いんぺいしょく)になっています。これは蝶が飛び立つときに、隠蔽色からいきなり派手な模様を敵に見せつけておいて逃げるためかもしれません。

いずれにせよ、目玉模様については鳥類に特に効果があるようです。詳しくは、「擬態のページ:眼状紋」で。

まねをする

毒はもっていないのだけれど、毒をもっている蝶をまねして、天敵などから身を守ろうとする方法。「ベーツ型擬態」といい、昆虫界では多くの種類がこの擬態をしています。擬態については擬態のページ:ベーツ型で詳しく解説しています。

隠れる

岩や木、葉などに翅を似せてじっとしている方法。有名な種類では沖縄にも分布しているコノハチョウが良い例です。その他の詳しい例は擬態のページ:隠蔽にあります。

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