フユセンチコガネの仲間

Rain Beetles


フユセンチコガネの仲間は、27種類からなる北アメリカ西海岸に分布するコガネムシの仲間です。「センチコガネ」の名前がついていますが、センチコガネではなく、独自のフユセンチコガネ科に分類されます。

北アメリカのコガネムシの中では、サイズが2-4cmと大きい部類に入ります。オスは黒く艶があり、メスは茶色っぽいことが多いですが、種類によってはツートーンになったりします。雄雌ともに、シャベルのような形の頭をしており、たいてい頭の中央にサイのような角があります。メスはずんぐりとした体つきで、 ゴルフボールのように丸くなることもあります。地中にもぐることに特化しており、フ節がオスと比べて短いです。また、メスは飛ぶことができません。オスの体にオレンジ色や黒色の毛がたくさん生えていますが、保温には役に立たないとの研究がありますが、再確認の余地がありそうです。体毛はもしかすると地中にもぐるときに、体を滑りやすくしているのかもしれません。ちなみにこの毛は、死んだ後に色が少し暗くなります。
オスの触角は大きく発達しており、その節の数も非常に多く、コガネムシの中では最多の部類に入ります。一方メスの触角はオスとは違って小さくて丸くなっています。本種は成虫になってからは何も食べないので、口と食道はつながっていません。

フユセンチコガネの仲間は、北アメリカのワシントン州南部から、メキシコのバハカリフォルニア州北部までのアメリカ西部に分布しています。メスは飛ぶことができないため、山や谷などで隔離されて種類が分化していそうですが、それほど多くの種類に分かれていないようです。種の分化は北アメリカを覆っていた氷河が大きく影響していて、また15000年前のミズーラ洪水によって標高200m以下の場所ではほとんど見つかりません。中国でフユセンチコガネの化石が中生代(約2億5217万年前から約6600万年前)の層から見つかっており、かつてフユセンチコガネがアジアにも生息していたことが分かっています。

11月から3月にかけて、雨季の始まりに集中して発生し、種類によっては1日しか活動が見られない種がいます。一部の種は早春3月の雪解けに合わせて発生する種類もいます。また、多くの種は夜明け前、雨が降る中活発に活動することが多く、採集にはライトトラップや、雨の中森を探索する必要があります。暗いうちに行動するのは鳥からの捕食を避けるためと考えられています。雨が降るとメスは地中から出てきて少し移動をし、再度穴を掘ってその中からフェロモンを出し、オスが来るのを待ちます。オスは活発に飛び回り、このフェロモンを嗅ぎつけて集まってきます。一匹のメスに20匹以上のオスが集まることもあります。気温の低い夜中に活動するオスは、筋肉を使って体温を39度まで上げる能力があります。成虫は食べることができないので、オスは2-3週間で寿命が尽きます。一方メスは地中の中で8月まで休眠し、8月ごろに自分がいるトンネルの中で卵を産卵をします。
 幼虫は木の根をかじりながら成長し(9齢以上になります)、時にはクリスマスツリー農園や果樹園の害虫とされることがあります。卵から成虫までは飼育下で13年かかることが確認されています。

Pleocoma LeConte, 1856

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フユセンチコガネ
Pleocoma dubitabilis dubitabilis Davis, 1935

採集地:アメリカ合衆国・オレゴン州(USA, Oregon)
大きさ:22mm

北アメリカ北西部に分布する普通種。オレゴン州のウィラメット川の西側に分布する。主に10月から発生し「冬」というより「秋」の虫といった方がいいかもしれない。

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フユセンチコガネ
Pleocoma dubitabilis leachi Linsley, 1938

採集地:アメリカ合衆国・オレゴン州(USA, Oregon)
大きさ:21mm

オレゴン州のウィラメット川の東側に分布する翅が茶色くなる亜種。ウィラメット・バレーの南部では前亜種と交わる場所があり、そこでは両方の亜種が見られるという。

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ケブカフユセンチコガネ
Pleocoma crinita Linsley, 1938

採集地:アメリカ合衆国・ワシントン州(USA, Washington)
大きさ:23mm

ワシントン州南部に生息する種。かつてはオレゴン州のフッドリバー群のものも本種とされていたが、2018年マーシャルによってオレゴン州のものは別種となった。

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ケブカフユセンチコガネ
Pleocoma crinita Linsley, 1938

採集地:アメリカ合衆国・ワシントン州(USA, Washington)
大きさ:22mm

本種はこのようなツートーンの型が多いが、上のような茶色型も同時に採れる。12月気温が零下でも元気に飛び回る。

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カドムネフユセンチコガネ
Pleocoma badia hirsuta Davis, 1934

採集地:アメリカ合衆国・カリフォルニア州(USA, California)
大きさ:26mm

前種によく似るが大型で頭の上にもう1つ上に向かう角があり、前胸背脇はとがる。

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カドムネフユセンチコガネ?
Pleocoma badia?

採集地:アメリカ合衆国・カリフォルニア州(USA, California)
大きさ:23mm

小型で前胸背がとがっていないが、おそらくbadiaではないかと。

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ヒメフユセンチコガネ
Pleocoma minor Linsley, 1938

採集地:アメリカ合衆国・オレゴン州(USA, Oregon)
大きさ:17mm

前胸背が茶色っぽく、翅は黒い。胸の前方中心に毛があるのが特徴。

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オオツノフユセンチコガネ
Pleocoma octopagina Robertson, 1970

採集地:アメリカ合衆国・カリフォルニア州(USA, California)
大きさ:28mm

大型で大きな触角が特徴。

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チャイロフユセンチコガネ
Pleocoma linsleyi Hovore, 1971

採集地:アメリカ合衆国・カリフォルニア州(USA, California)
大きさ:25mm

全身茶色の種。

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クロフユセンチコガネ
Pleocoma puncricoli River, 1889

採集地:アメリカ合衆国・カリフォルニア州(USA, California)
大きさ:26mm

毛が黒いのが特徴。

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シミフユセンチコガネ
Pleocoma simi Davis, 1934

採集地:アメリカ合衆国・オレゴン州(USA, Oregon)
大きさ:25mm

オレゴン州南部に分布する茶色の種。触角のラメラが4つしかない。





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