■蝶はどの様に進化してきたのでしょうか。「種」とは何なのでしょうか。蝶の進化について、纏めてみました。
種の進化は現在一般的にも受けいられている説ですが、人間の一生では観察しきれない時間で進められていくため、まだ実証されたとはいえません。
短時間で変化したといわれる種類では、オオシモフリエダシャク(Biston betularia)がイギリスのマンチェスターで観察されています。オオシモフリエダシャクは、羽が白く、とまっている木の幹の色に似ているため、鳥などの天敵から身を守ることが出来ていました。
公害前の白い幹では、黒い個体が目立ち鳥などに捕食された。ところが、マンチェスターが工業地帯であったため、汚染により多くの木が煤煙などにより、黒くなってしまい、白い蛾はかえって目立つようになってしまったのです。じつは、しばしばオオシモフリエダシャクの黒化型が発生していました(これは1つの遺伝子が変わったことから発生する異常型です)。目立つようになってしまった白い正常型の蛾は多くの天敵により捕食されたために数が減ってきましたが、逆に黒化型の方は黒い羽が保護色となって、数を増やしていきました。1850年ごろから観察されていたこの現象は、1920年頃には何と、95%近くがこの黒化型になってしまいました。
公害後の黒くなった幹では、従来の白い個体が目立つようになり鳥に捕食された。その後、公害も少なくなり木の色が元に戻ってきたとき、逆の現象が起きて、また白いオオシモフリエダシャクが増えました。同じ様な現象はアメリカでも見られ、この様な黒化型は現在工業黒化型と呼ばれています。一時的に異常型が増えたという現象ですが、種の進化にもきっと見られる現象の一つでしょう。
●「種」とは?
リンネが命名法を発明した時、種の定義は外見の違いなどによる形態的差異の方法に頼ってきました。しかし、この方法は誤解を生むこともありました。例えば南アメリカに生息しているミツボシタテハのオスとメスや日本にも生息するタテハモドキの夏型と秋型は見た目が違うため別種扱いされたときもありました。
当初別種と思われていたミツボシタテハ(Catonephele numilia)のオスとメス。最近は、この種の定義も大分固まってきました。すなわち、種とは、何匹かの昆虫が、共通の形態や性質を持ち、その雌雄が野外で自由に自然に交尾し、受精卵が異常なく成虫まで育ち、しかも代々健全な子孫が育っていく(昆虫用語小辞典より)集団のことを指すようになりました。
では、「種」はどの様にして発生したのでしょうか?
●漸次(ぜんじ)的進化
通常考えられる種の進化パターンは、ある種が別の種類に進化していくパターンです。ある祖先種がいて、徐々に進化して種類Aと種類Bに分かれていくパターンがあります。大きな流れでは、魚→両生類→爬虫類→鳥類などといった進化が考えられます。
また、小さな流れの中では、ある蝶の種類が別々の種に発展する事があると考えられています。この種の分離要素としては、地理的な隔離が原因であることが多く、谷ごとに個体変異があるとか、山ごとに個体変異があるとかいった種類が、長い時間をかけて別々の種に発展していくと考えられます。
大陸が分裂して、ある種が違う種類に進化していく様子。この様に、長い歳月の間隔離され、別々に繁殖した結果、お互いに繁殖できなくなるまで別々に進化し、別種になったパターンで、オリジナルの祖先種から新しい種に進化する過程に「半種」という状態が発生します。これは、下図にあるとおりそれぞれ別の種に進化している途中の状態の事で、この段階では半種Aと半種Bは自然界では互いに交配する事が無くなっても、強制的に交配させれば、繁殖は可能な状態です。北アメリカに生息するアメリカアオイチモンジとアメリカイチモンジは頻繁に雑種が発見され、半種の状態なのかもしれません。
時間 →また、長い進化の流れの中では、種類がドンドン増えていくだけとは限りません。一度離れてしまった、種類Aと種類Bがまた一緒になり、1つの種類になることだってありえます。ただ、これらのプロセスは何千万年もの時をかけておこるものであり、人間が一生の間で見られるものではありません。ただし、突然変異は上記のイギリスの例のように、ある日突然訪れる可能性があります。
●突然変異による進化
突然変異は生殖能力が正常である可能性が低いと思われ、進化のパターンとしては非常に珍しいケースと思われます。しかし、自然界で時折見られる突然変異は、新しい種を生み出す可能性を持っていると言えます。
時間 →●種を進化させる力
種を進化させる(又は、変化される)力は、いま次のようなことが考えられています。
◆環境の変化
最も有名な事例は、イギリスで観察された上記の例。
◆擬態関係
擬態関係で種の間に働く進化の力は2通り考えられます。一つはミュラー型擬態関係にあるグループで、このグループの蝶達は、互いに似たような模様になるように進化を続けるという説があります。
もう一つは、ベイツ型の擬態における進化で、種を進化させる力が強いと言われています。それは、モデル側がミミック達に擬態されることで、派手な模様の羽を装うメリットが少なくなってしまうというもので、すなわちモデルは出来るだけミミックと違う模様を持とうとする力が働き、羽の形や色が進化していくという説です。→モデルとミミックの関係